私立・共学
学科:普通科
齋藤先生:
当校では、高校生から探究活動に取り組んでいます。懸念点としては、問いを立ててもすぐに答えを出そうとする傾向が強いことでした。アクティブ・ラーニングをしても、他者の意見を聞いて考えを変容させていくことができない生徒も多く、これでは学びが深まらないし、広がらないと感じていました。高校2年生になり、研修旅行(修学旅行)をつうじて探究活動をおこなえば、実際に現地に行ったり現地の方の話を聞いたりするなかで、思考の硬直状態から抜け出せるのではないかと考えました。
齋藤先生
そこで、探究活動のツールとして、Classi連携サービスのひとつであるJTB「修学旅行探究ノート」を導入しようと決めました。昨年度から「Classiポートフォリオ」に記入していたので、「Classi」ならばポートフォリオとの連動性が高い点や、教材が生徒の進路検討や思考力育成につながっていく点が決め手となりました。
Classi 連携サービス「修学旅行探究ノート」
小谷野先生:
研修旅行の学びのテーマは「平和」。台湾・韓国・沖縄から生徒が各々行き先を選びます。今年は、韓国が約25人、台湾が約70人、沖縄が約150人という内訳になりました。それぞれ3泊4日の行程です。
旅行の前・旅行の後を含めて、JTBの「修学旅行探究ノート」と「Classiポートフォリオ」で配信した振り返り項目に取り組み、それをもとに最後には、台湾・韓国・沖縄のガイドブックを作ることを学習目標としました。これまでの研修旅行では、個々人がレポート作成していましたが、きちんと学びにつなげられる設計にしたいと考えていました。
小谷野先生
小谷野先生:
毎週火曜日の6時間目のLHRに、「修学旅行探究ノート」を使って事前学習をおこないました。事前学習スタート時から「自分たちにしか作れないオリジナルガイドブックを作ろう」と呼びかけました。
事前学習の中で苦労したのは、第3章「問いを立てよう」です。探究学習においては最も重要である[課題設定]にあたる工程です。生徒たちの最初の反応は、「問いって何?」という戸惑い。せっかく現地に足を運ぶにもかかわらず、行かなければわからないところに問いを見出せていませんでした。最初は生徒が思いつくままに活動した内容を「Classi」へ記入し、そこから思考の不足や短絡さなどを教員が指摘していきました。「実際にその問いを軸にしたガイドブックがあると、おもしろいか」を掘り下げて考えました。
生徒A:
私たちのグループも、問いを立てるのには時間がかかってしまいました。私は韓国に行ったのですが、最初の頃の話し合いでは韓国のイメージや知っていることを出し合って、そこから問いを立てようと考えました。その中で、「日本の学校と韓国の学校を比較する」というテーマにしぼられていきました。
オリジナルガイドブックを作るための心構え
武田先生:
Classiには、毎日活動の振り返りを入力しました。研修旅行中の夕方に振り返り項目をポートフォリオに配信して、夜にホテルのWi-Fiを使って入力してもらいました。リアルタイムで把握でき、「こういうことを思っていたんだ!」と思いました。
沖縄に行ったグループの一人が、戦争体験談を聞いて、「友達と喧嘩したり家族と揉めたり、自分が嫌いになったり、友達が嫌いになったりすることもあるけれど、それも生きているからできるんだな」と書いていました。他にも、「毎日に感謝したい」「自分の子どもが産まれたら行かせたい」などの感想もあり、自分の言葉で表現できていると感じました。
これからは、この学習記録データをどう使っていくかということを教員がきちんと考えて行かなければいけません。
武田先生
生徒B:
私も韓国に行きました。交流する学校は決まっていて、事前に質問事項を考えていきました。でも、緊張して予定していた質問を忘れてしまうトラブルなどもありました。韓国の生徒は英語や日本語を話せて、学校について詳しく聞くことができました。今回の経験から、言葉の壁があっても案外仲良くなれる自分の特長に気づくことができました。
研修旅行中は振り返り項目がClassiのポートフォリオで配信されるので、毎日そこに記入して、気づきを大事にしようと思いました。
生徒A:
ありました。一番驚いたのが、勉強時間です。放課後は学校の自習室で5時間もかけて夜まで勉強するんです。あと、想像以上にみんなフレンドリーでした。
武田先生:
研修旅行から帰ってきて、「修学旅行探究ノート」の振り返りの章にある「グループ活動でどのようなことをしたか」、「自分はそれに対してどのように取り組んだか」、そして、最後には「自身の成長を振り返る」など、旅全体の気づきや感想を「Classiポートフォリオ」に入力しました。私が特に重要だと感じている振り返りの項目が、「未来の自分に向けたメッセージ」を書くということです。研修旅行に行って終わりではなく、自分の次のステップとして振り返りができる点がいいですね。
小谷野先生:
研修旅行後2回に分けて、ガイドブックをまとめる時間を取りました。台湾・韓国・沖縄への旅行者や後輩に向けて作成。自分たちのグループで立てた問いを軸にし、ターゲットに向けたガイドブックを最終課題とすることで、より探究活動が深まると考えたのです。
最終発表会の前に今回専用に準備したルーブリックに照らし合わせて、教員がチェックして、フィードバックを行いました。最終発表会は、1グループ3〜5分の持ち時間でした。「韓国の学校について」や「守護神シーサーについて」などの発表が行われました。
生徒B:
グループのメンバーで分担して作っていく中で、どうテイストを揃えていくか課題になりました。そこで、韓国で人気だった日本のキャラクターをそれぞれのページに入れる工夫をしました。最終発表会では、自分たちで考えた工夫や実際に韓国の高校生や大学生にインタビューしたことなどを伝えました。
齋藤先生:
ルーブリックをもとに、学年の生徒たちと11人の教員が評価をします。ガイドブックに対する評価なので、「読みたいと思ったかどうか」が軸となります。5点満点で、最高の評価は「増刷決定! 観光客も印税も増える。出版社にスカウト?」という項目にし、聴講する生徒たちにも楽しんで臨ませました。ルーブリックを作るにあたっては、「いいガイドブックを作るとはどういうことだろう」と教員側でも考えを深めていきました。結果的には、問いをしっかり立てられているガイドブックは軸が通っていて、良い評価を得られていました。
作成したガイドブックは文化祭で展示し、全校生徒の前でも発表の場を設けます。
プレゼンテーションのルーブリック
武田先生:
一番変わったのは、生徒たちに自分たちの目で見てこなければいけない・考えてこなければいけないという意識を育めたことです。自分たちで立てた問いを解決しなければいけないので、その問いに対して活動をする生徒が多かったことが印象的でした。
これから教員たちで、研修旅行に行く前と行った後の生徒の考え方の変化をコメントから見いだしてみたいと思います。
齋藤先生:
これまでの探究活動で育んだ考える力をさらに深めるために、3年生では地域研究(地理)の授業が設定されています。その前段階として、2年生の2月からは「横浜」をテーマにした探究活動がはじまります。
研修旅行前に教員間で、探究活動で生徒達に何をやらせるのか、どう評価をするのか、そもそも探究とは何かを考えました。しかし、その時に出た答えで終わりではありません。今後も探究活動を続けていく中で、私たち教員は引き続きそれらの問いを深めていかなければいけないでしょう。
生徒の探究の時間に終わりはありません。時間があればあるだけ彼らは思考を深めていくことができる。実際に、ガイドブック作成の探究活動も、時間があればもう少し深めていくことができたグループがあったと思います。教員として、授業という限られた時間の中でどう探究活動を組み立てるか考えていきたいと思います。
※2019年9月取材
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学校情報
関東学院中学校高等学校
(神奈川県)
学科 | 普通科 |
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規模 | 1学年 約250人 |
進路状況 | 国公立大学:東京工業大学1人、横浜国立大学2人、横浜市立大学2人、信州大学3人など15人。私立大学:早稲田大学5人、慶應義塾大学4人、東京理科大学8人、青山学院大学14人、中央大学9人、明治大学6人など173人。海外大学に2人進学 |
URL | http://www.kantogakuin.ed.jp/ |