主体性を育む振り返り蓄積と保護者連携で目指す「新しい進学校」の形

桐蔭学園高等学校・中等教育学校 (神奈川県)

私立・共学
コース:プログレス・アドバンス・スタンダード
Classi利用歴:2015年度より

  • 私立
  • ポートフォリオ
  • 保護者活用

 

桐蔭学園高等学校・中等教育学校は、学びの3本柱として「アクティブラーニング(AL)型授業」「探究」「キャリア教育」を掲げ、「自ら考え判断し行動できる子どもたち」という教育ビジョンのもと、生徒の主体性を育む教育を実践しています。

大学入試制度の変革期を迎える中で、従来の教科学力中心の一般入試に加え、「総合型選抜」、「学校推薦型選抜」といった入試形態にも対応する「新しい進学校」の形を模索しています。
多様な生徒たちが大学入学後、さらには社会でも通用する力を身につけるためには、従来のやり方をデジタルに置き換えるだけではなく、デジタル化によるコミュニケーションの拡張を求めて、様々なチャレンジを進めています。
Classi活用を推進されている川妻先生と林先生にClassi導入の背景や活用状況についてお話を伺いました。

 

中等教育学校 校長補佐 川妻 篤史先生(写真左) 学び支援部次長 林 謙介先生(写真右)

桐蔭学園高等学校・中等教育学校のClassi活用 ここがPOINT

  • 学びに必要な時間を作るために重要度が増した「時間短縮」という要素
  • どの先生、どの授業でも最低限のICT活用ができる状態を目指す
  • 生徒の成長を見守るためには、簡単に情報にアクセスできるデジタル化は必要不可欠
  • 先生からのフィードバックが目的ではない。生徒自身が振り返る機会をつくるところに意味がある

学びに必要な時間を作るために重要度が増した「時間短縮」という要素

Classi導入時に抱えていた課題を教えてください。

林先生

「自ら考え判断し行動できる子どもたち」を育成するためには、生徒が考える時間や考えたことを発表する時間、生徒同士で話し合う時間、そのような時間を作り出していくことが必要です。
それに伴い、「時間短縮」という要素が学校現場で非常に重要視されるようになりました。
時間短縮により、生徒に必要な時間を確保するために、本校では新しい文房具としてiPadの導入やICTの活用が本格的に始まりました。

 

川妻先生

ICTを活用した先進的な取り組みを行っている学校はたくさんありますが、一部の意欲的な先生と、ICTが苦手で積極的になれない先生の両方が、どの学校にも存在するのは当然のことだと思います。
本校では、特定の先生だけではなく、どの先生、どの授業でも最低限のICT活用ができる状態を目指しています。そのような考え方から、Classiの導入にがつながったと考えています。

 

現在、どのようなシーンでClassiを活用されているのでしょうか?

林先生

一つは学習の振り返りをポートフォリオで蓄積しているのと、保護者を含めた校内のコミュニケーションツールとして、校内グループやアンケート機能を利用しています。

 

川妻先生

本校のアクティブラーニング型授業では、日々の授業の中での振り返りが極めて重要な位置付けとなります。
様々な研究でも、振り返りが主体性に非常に効果を発揮することがわかっているので、振り返りによる情報蓄積が本校のClassi活用の出発点となっています。

 

生徒の成長を見守るためには、
簡単に生徒の振り返り情報へアクセスできるデジタル化は必要不可欠

振り返りを紙で実施している学校も多くあると思います。デジタル化するメリットをどのように考えられていますでしょうか?

川妻先生

多くの学校では、授業やテストの後に生徒に振り返りを記録させていると思います。
学年や授業の担当教師によって、どのような振り返りを行いたいかは異なると思います。そのため、各現場でさまざまなスタイルの振り返りができるのです。
しかし、学校としては生徒の成長を見守りたいので、重要なタイミングで全員が同じ基準で振り返りを行う必要があると考えています。

例えば、中等1年生から入学した生徒が学期ごとに振り返りを蓄積していけば、高校卒業時にはかなりの情報量になると思います。
入試に向けてポートフォリオ作りをする必要はありません。自然に生徒ごとのポートフォリオができあがることが理想です。
デジタル化することで、振り返りを確実に蓄積し、生徒や教員はいつでも記録を見返せるようになります。本校では、習熟度別の評価によるクラス変更があるため、どの先生でも簡単に情報にアクセスできるデジタル化は必要不可欠でした。

 

 

具体的にはどのような流れで振り返りをしているのでしょうか?

川妻先生

定期考査が終了した後、第1段階として、授業ごとに以下の4つの項目について、4段階で生徒自身が評価をします。
これは、アンケート機能を利用した選択式で行われます。

 

項目1:主体的に授業に取り組めたか?
項目2:授業を理解できたか?
項目3:主体的に協働学習に取り組めたか?
項目4:授業の中で振り返りを次の学びに繋げることができたか?

 

 

 

その後、期末考査が終わった段階で、ポートフォリオ機能で自由記述の評価を行います。以下の3つの項目について評価をします。

 

項目1:生活面
項目2:活動面(ホームルームや委員会活動などを含む)
項目3:学習面(成果が出たこと、課題が残ったこと)

 

 

学期ごとに、振り返りを2段階で実施し、生徒たちはClassi上で振り返りの記録を確認することができます。
以前は、振り返りを自由記述で紙に書いて回収することもありましたが、回収後の処理が大変で、生徒たちも多くの授業を受けているため、振り返りの質がなかなか向上しませんでした。
そこで、改良を重ね、第1段階をアンケート形式にし、第2段階はまとめとして文章化することで、振り返りの質を向上させる試みを行っています。

 

先生からのフィードバックはできなくてもいい。
生徒自身が振り返る機会をつくるところに意味がある

振り返りの取り組みを進める上でのポイントはどのような点でしょうか?

川妻先生

ポイントは3つあります。
1つ目は、振り返り項目の設定です。各学年で行っていた振り返り項目を全て盛り込むと膨大な量になってしまいます。そこで、本校が大事にしているポイントや目指していることを見失わないように逆算しながら項目を設定していきました。

 

2つ目は、振り返りの分析です。
実施後に、振り返り項目ごとの関連性をパス解析したり、データを用いて先生方に説明することで、振り返りの意義や状況を理解してもらいます。
そうすることで、先生方は生徒に「とりあえず入力しなさい」という指導ではなく、重要性を認識してもらえることで、振り返りを入力する時間をわざわざ設けてもらえるようになり、結果として振り返りの回答率や質の向上にもつながります。

 

ポイントの3つ目は、先生方が介在しなくてもいい運用の仕組みづくりです。
振り返りの課題配信に関しては、事前に配信するタイミングを決め、設問項目も変わらないので、全学年の課題を教務事務の方が一人で配信しています。これはデジタルだからこそできる仕組みだと思います。
そして、先生方には「生徒が振り返る機会を作ること」が一番重要であると伝えました。もちろん、生徒の振り返りに対して先生方がフィードバックをすることは大事ですが、フィードバックが難しい場合はできなくてもいいし、うまくいかなくてもいい。まずは生徒自身が振り返る機会をつくるところに意味があるということを確認しました。

 

取り組みを続けることでどのような変化がありましたか?

川妻先生

本格的に取り組みを始めたのは昨年度からなので、振り返りの内容がどれだけ「自ら考え判断し行動できる子どもたち」の育成にがつながったか評価するには、まだ時間が必要だと考えています。
今年度見えてきた変化としては、テストが終わってテスト返却をしながら面談をしていますが、その中で振り返りの内容を材料にしながらフィードバックをしている先生が増えてきていることです。
振り返りがしっかりかけていない生徒はテストの結果もよくないケースが多々あります。そのような状況を把握しながら、次に向けてどうすべきかを対話していきます。
生徒たちにも自分が過去に書いた振り返りを見返して、その成長を実感してほしいと考えています。私たち教員としては生徒を横並びで見てはいないので、生徒自身がどのように成長を感じてくれるのか、今後が楽しみですね。

 

生徒の成長を見守るという点においては、教員だけではなく保護者の存在も大きいと思います。
保護者を含めた校内のコミュニケーションツールとしてどのような活用をされていますか?

林先生

これまで、学校から保護者向けに出すお知らせはほとんどがプリント配布でしたが、現在はほとんどをClassiの校内グループで投稿しています。
プリント配布では紛失のリスクがあり、欠席者への配布の確認等に注意が必要でした。また、出力に時間がかかっていたので、デジタル配信に切り替えたことで教員の業務軽減にもがつながっていると思います。
事務や保健室の先生にもClassiのアカウントを付与しているので、就学支援金や健康診断の案内などは直接配信をしてもらっています。

 

保護者利用を促進するために意識をしたことはありますか?

林先生

保護者の活用に関しては、すぐに広まるわけではなく、導入直後はある程度時間が必要だと思います。Classiに限らず、他のツールについての話を聞いてもそうですが、やはり利用しなくてはならない状況を作っていくことでしか、状況は変わらないと思います。
本校では、欠席連絡を電話連絡からClassiの欠席連絡機能を使うようになったことで、Classiを使わないといけない場面が増えて、利用率が上がったと思います。
現在は、入学式の日にアカウントを説明用紙と一緒に渡して、特別な説明をすることなく利用いただいています。

 

保護者IDの自動発行で名簿管理は不要。
判子を押してもらうような安心感がある

保護者とのコミュニケーションにClassiを利用するメリットはどのような点にあると思いますか?

林先生

保護者のIDが独立して自動発行されるのはとても便利だと思います。
以前はメールで連絡を取り合っていた時期もありましたが、メールアドレスだけではどの生徒の保護者から連絡が来たのか判断できないことがありました。また、メールアドレスで生徒情報を確認する手間や、メールアドレスの名簿管理の必要性も出てきてしまいます。Classiを使えば、どの生徒の保護者から連絡が来たのか一目瞭然で確認できます。

保護者会の出席アンケートを紙で配布していた際には、保護者の判子を押していただいていましたが,Classiを使えば、保護者がログインして回答をする必要があるため、私の感覚的には判子を押してもらっているのと同等の安心感があります。特に、金銭が関係するお知らせや承諾に関しては、保護者の確認が取れているかはとても重要です。

 

今後のClassi活用において考えていることはありますか?

林先生

コミュニケーションツールとしての利用は、現在行っていることを確実に続けていければと思います。ポートフォリオやアンケートの振り返りに関しては、定期テスト後など決まったタイミングでの活用ができていますが、より日常的な活用を考えると、今後は学習ツールとしての利用もすすめていきたいと思っています。ICTを活用した個別最適化学習は、トレンドとして存在していますが、まだ発展途上だと思います。

特に、部活動に参加している生徒の時間の使い方は、昔から課題とされています。空き時間に単語帳を見ていた時間に、ICTを利用することでより効率的に学習が進められ、生徒がより主体的に活動できるようになると良いと思います。

 

 

 

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