公立・共学
学科:普通科、理数科
Classi利用歴:2015年度より
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佐賀県立致遠館中学校・高等学校は、生徒の学力向上を目的に2015年にClassiを導入しました。その後5年間にわたる試行錯誤を経て、現在Classiは致遠館の学校生活に無くてはならないICTツールとなっています。
授業内でのWebテスト利用、学習記録を利用した毎日の学習時間調査、生徒カルテを利用した進路指導、紙のプリント配布からPDF配信への移行、臨時休校時の双方向コミュニケーション、校内グループを利用した教員の日報デジタル化など、その利用範囲は学校生活全般に及んでいます。Classiの利用推進を主導されている3名の先生方に、同校でのClassiの利用方法をうかがいました。
本校では教員の日報をClassiに移行し、すべての教員にログインを強制化したことからClassiの利用が広まっていきました。何か1つでも“便利になった”“有効だ”と思えることがあれば、そこからICTの利用が広がっていくと思います。“ICTが当たり前”の世界に対応するため、まず私たち教員から意識を変えていきたいと思います。
(写真左から)池田 健一 先生、山﨑 俊明 先生、古川 雄一郎 先生
(※山﨑先生は2020年度3月末まで在校)
誤答率、学習時間など、Classiで得られる客観的なデータを学習指導に活用
致遠館では、授業においてClassiのWebテストが頻繁に利用されています。例えば、英語の授業では英単語のテスト、古典の授業では古文単語のテストなど、各教員の判断で教科に応じたWebテストが実施されています。Webテストについて山﨑先生は「データに基づいた学習指導ができる」と高く評価をしています。
山﨑 俊明 先生
山﨑先生:
「Webテストなら、問題ごとに生徒がどの選択肢を選んだかをパーセンテージで把握できます。例えば、誤答率が90 %の問題において、誤答が1つの選択肢に集中していれば、そこは授業でしっかりと解説すべきポイントと判断できます。ベテラン教員が経験から把握していることを、若手教員がデータから把握できるようになりました」
生徒の学習時間データも学習指導に活かされています。致遠館ではClassiの学習記録を利用し、生徒の毎日の学習時間をチェックしています。学年やクラスによって特定の教科に学習時間が偏るようであれば、教員の指導や課題の量に問題がないかを学年主任がチェックし、教科ごとのバランスを取ります。
Classiの導入により、「勘」「経験」「感覚」ではなく、客観的なデータ(エビデンス)に基づいた学習指導がおこなわれるようになりつつあります。
成績、学習状況、志望校などの情報を生徒カルテに集約し、面談での深掘りに役立てる
データが活かされるのは学習指導だけではありません。進路指導においてもClassiのデータが活用されています。
致遠館ではClassiの生徒カルテを使い、生徒一人ひとりの学習状況や模試の結果、担任の先生による所見などのデータを集約しています。生徒カルテには生徒自身が記入する志望校のデータも記録されており、生徒の志望校や学科が変わったタイミングでの面談の実施などは、進路指導の際に役立つと山﨑先生は言います。
山﨑先生:
「私は進路指導の際、生徒カルテの成績や判定だけでなく、志望校の変化もチェックしています。GTZ(学習到達ゾーン)は変わらないのに、志望校を変えているような生徒がいれば、なぜ志望校を変えたのかをヒアリングします。すると生徒が本音を話してくれることがあります。データが手元にあることで、面談ではこうした深掘りをおこなうことができます」。
さらに、データは教師間での共有を容易にするので、生徒の状況に応じた教師(教科担当者など)に面談を依頼することの効果も最大化することができます。
授業中に出題した問題の解答をアップ 欠席や不登校の生徒も授業内容をキャッチアップできる
情報伝達の方法も大きく変わりました。紙のプリントはPDF化され、Classiの校内グループを通じて配信されるようになりました。プリントの紛失や再配付の依頼はほとんどなくなっています。
池田 健一 先生
数学を担当する池田先生は、数学の校内グループを開設し、授業中に出題した問題の解答をアップしています。このグループは全校生徒に開放されているため、学年やクラス、普通科や理数科などのコースを問わず、解答を知りたいすべての生徒がアクセスすることができます。欠席した生徒や、不登校の生徒が授業内容をキャッチアップできるようになりました。
校内グループには生徒からのコメント投稿も数多く寄せられます。普段は無口な生徒がClassi上では積極的にコメントをすることも多く、先生方は「自分の意見をあまり表に出さない生徒の意見や思いを知ることができる」とコミュニケーションツールとしてのClassiの有効性を評価しています。
連絡事項の配信だけでなく、双方向コミュニケーションで生徒の体調やメンタルを把握
致遠館では、Classiを利用した情報伝達、コミュニケーションが日常的に行われているため、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う2020年3月の臨時休校でも大きな混乱なく対応することができました。
休校中の諸連絡や資料の配布はClassiを介しておこない、特に重要な連絡には「確認後、チェックボタンを押してください」と文章に添えることで、全生徒への確実な情報伝達が可能になりました。
Classiの学習記録を利用した学習時間のチェックは休校期間中にも毎日おこなわれました。休校期間中は特別に、学習時間の他に毎日の体温を記録させ、生徒の体調に異常がないかを教員が確認しました。不安な気持ちをコメントで打ち明けてくる生徒もいたそうで、Classiを経由して生徒の心のケアもおこなうことができました。「Classiはまさに本校の危機管理を救ってくれました」と池田先生は休校期間を振り返ります。
働き方改革が推進され、教員が本来やるべき根幹業務に集中できる体制が整った
Classiは致遠館の学習指導、進路指導、コミュニケ―ションを大きく変えましたが、教員の働き方改革の推進にも大きなメリットがあると先生方は評価します。
例えば、ClassiのWebテスト利用により、授業内のテスト実施に伴う印刷・採点・集計・分析の手間は大きく削減されました。ある時からは教員の日報もClassiの校内グループに移行し、毎朝日報を共有するためにおこなっていた100枚近くの紙の印刷が不要になりました。現在日報は出張先からも提出・確認ができるようになっています。
Classiの導入によって、生徒との面談や部活動の指導、教材の研究など、教師が本来おこなうべき仕事に注力できる時間と余裕が生まれたと古川先生は評価します。
古川 雄一郎 先生
古川先生:
「ICTが業務の枝葉部分を削ぎ落し、教員が本来やるべき根幹業務への集中を助けてくれました。“楽になった”というより、“もっといい仕事をしなければ”という責任感が生まれています」
デジタルとアナログ、それぞれの良さを組み合わせバランスよく活用していくべき
Classiをはじめ、ICTをフル活用している致遠館。最後に、これからICTを本格活用しようとする学校に向けてのアドバイスをうかがいました。
池田先生は、致遠館がClassiを導入した2015年からClassiを利用されており、Classiが学校生活に浸透していったプロセスを良く知る先生の1人です。
池田先生:
「どんなに小さなことでもいいので、まずはトライしてみてはいかがですか?とお伝えしたいです。本校では教員の日報をClassiに移行し、ログインを強制化したことから利用が広まっていきました。デジタルネイティブである生徒たちに使い方を教えてもらうのもいいと思います。何か1つ“便利になった”“有効だ”と思えるものがあれば、そこからICTが広がっていくと思います」
山﨑先生:
「ICTと聞くと身構えてしまう方も多いと思いますが、これまでの業務すべてがデジタルに置き換わってしまうわけではありません。本校では、教師の手書き解答を写真に撮り、Classiで配信することもあります。デジタルにはデジタル、アナログにはアナログの良さがあるので、目の前の生徒にあわせてデジタルとアナログをバランスよく使っていくのがよいと思います」
致遠館では今後、Classiのポートフォリオ機能や、学習動画の本格活用も視野に入れています。デジタルの良さ、アナログの良さをうまく組み合わせながら、生徒の成長にさらに貢献をしていく考えです。
※2020年3月取材
学校情報
佐賀県立致遠館中学校・高等学校
(佐賀県)
学科 | 普通科、理数科 |
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規模 | 中学校 各学年 約120人/高等学校 各学年 約240人 |
URL | https://www.education.saga.jp/hp/chienkankoukou/ |
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