私立・中高一貫校・共学
学科:普通科
守脇先生 :
2020年の教育改革に向けてアクティブ・ラーニングや協働学習などの能動的な学びをどのように実現していくべきかを校内で議論する中で、ICT化を進めることで対応することを考えました。
その狙いは、授業効率を上げることでした。アクティブ・ラーニングなど新たな指導の時間を捻出するには、従来の講義型の授業で行っていた知識をインプットする時間をいかにして短縮するか、そしてその浮かせた分を生徒達の能動的な活動時間に充てることだと考えました。具体的には黒板にチョークで書いていく時間や教科書に書いてある内容を説明する時間などICTで代替できるものは省略し、議論や活動の時間など授業の中でしかできない指導を意識的に増やしていきました。
守脇先生 :
ICT活用計画は3か年計画で進めています。環境面では今年中学1年~3年の各学年に1教室ずつICTを使った授業が行えるマルチルームという教室を作りました。この教室にはプロジェクター付の電子黒板を2台設置し、セルラータブレットを40台用意しました。電子黒板を2台用意したのは、片方は動画や資料など教員側から提示したい素材を投影するため、もう片方の電子黒板は、Classi NOTEを使って生徒の答案・意見を表示しながら協働学習を進めるためなど、目的に応じて使い分けています。
マルチルームの次は、パソコンに特化したメインルームというアクティブ・ラーニング用の教室を作り、次年度は全ての教室に電子黒板を導入予定です。今はICTツールを使える部屋が3教室と限られているので予約制をとっていますが、この半年間で3教室の授業での稼働率は95%と多くの教員が活用しており、3か年計画の1年目としてはまずまずのスタートを切れていると思います。
▲電子黒板を2台設置したマルチルームの様子
笹尾先生 :
ICTを使う事がゴールではないということです。私の授業でのICT活用はあくまでインプットする時間を効率化することを目的に活用しています。例えば、知識のインプットであれば短尺の動画を流して、メモを取らせながら情報を整理させる時間をとります。またタブレットとClassi NOTEを使って生徒同士の考えをシェアしたり、グループワークでのアウトプット活動のツールとして活用しています。
笹尾先生 :
タブレットとClassi NOTEを使った授業を行って、大きな変化は2つあると感じています。
1つ目は生徒達の授業参加への積極性が格段に上がりました。自分の意見や答案が前方のスクリーンに即時に表示されるので、参加せざるを得ない状況になり誰1人授業中寝なくなりました。また今までは手をあげて発言することに抵抗感を持っていた生徒がClassi NOTE上であれば積極的に書いてくれるので教師側が把握し、その頑張りを褒めてあげることができます。最近では「自分の答案を取り上げてほしい!」と生徒達がモチベーション高く授業に参加してくれるので授業内容も濃くなったと思います。
2つ目の成果は蓄積されることで生徒の成長や変化が分かることです。半年間様々な問題やレポートに取り組ませて、定期的に振り返る時間も取っているので、同じような問いやレポートが出された時に生徒自身が経験を踏まえて改善した答案やレポートを書いてくれます。そういった成長や変化が見えるのは指導する上でも効果的だと思っています。
▲笹尾先生(教育研究部)、守脇先生(副校長先生)
①前回の授業・テストの振り返り
→生徒にClassi NOTEを使って「次回テストへの改善」「前回の復習問題」を解答させる。リアルタイムで投影される生徒の解答を使って先生が解説(生徒はタブレットを利用)
②短尺動画を活用した知識のインプットの時間
→動画を見るだけではなく、そこで知識を整理するためにワークシートを用意して生徒にメモを取らせる。先生からはポイントを絞って解説
③情報を整理し、考えさせる時間
→②で使ったワークシートやポイントを元に要点を先生から解説。また写真や資料をClassi NOTE上で共有して、個人やグループで考えさせる時間を作る(生徒はタブレットとノートの両方を利用)
④まとめと今後の宿題について
→宿題で行うレポート作成について「良いレポートとは?」という意見をClassi NOTE上で書かせる。生徒の意見を共有しながら良いレポートについて全体で共有して、宿題のレポートテーマを発表
①ワークシートや投影する資料はシンプル
→生徒にまとめさせることを目的にした構成
②生徒の答案を通して、先生のメッセージを発信
→生徒の答案で伝えた方が生徒の記憶に残るためClassi NOTE 上の生徒の答案を使って解説することを意識
▲笹尾先生の授業でのClassi NOTEの画面
守脇先生 :
私の授業では、添削指導として活用しています。今まではノートに書かせた生徒の答案を授業中に発表させると、取り上げられるのは2, 3答案のみでした。授業後にノートを回収し、添削して返すという形をとっていましたが、手間もかかりますし、添削してみるとこの答案を取り上げれば良かったと思うことが多くありました。
そこで今年から、生徒達はノートに書いた答案をタブレットを使って写真に取り、Classi NOTE上にUPします。全員の答案をリアルタイムで共有できるので、先生が良い答案を全体に示しながらその場で添削する様子を見せながら指導しています。受験指導では、グループワークなど話し合う時間は取りにくいですが、全体の答案をシェアする時間は個人活動でも他人の意見を取り入れることができるため、結果的に協働的な学びに繋がっていると感じます。
守脇先生 :
半年間タブレットとClassi NOTEを使った授業を行って感じる手応えとしては、教員の意図やメッセージを生徒達に浸透させやすくなったことが挙げられます。
例えば社会科では、科全体の方針として論述指導の中で「対比・因果関係・逆接」といった3つの論点から考え、記述するように6年間かけて指導していきます。昔からこの方針は変えずに指導してきましたが、従来のように教員側から発信するより、Classi NOTEを通して生徒の答案からその方針を示した方が生徒達には伝わります。授業の中で他の生徒の答案を即時に共有しながら、良い答案の観点を繰り返し伝えたことによって、教員が伝えたい観点が浸透してきました。最近添削をしていても例年と比べて論述答案の仕上がりが非常に良いと感じています。模範解答例を教員が示すよりも「クラスの友達が書いた良い答案」の方が生徒達には伝わるということだと思います。
①宿題や授業冒頭で問題を生徒に解かせる
→解答方法はプリントとノートに記載する従来の形式
②解いた答案をClassi NOTE上にUPし、全体共有
→生徒はタブレットで自分の答案を写真に撮り、Classi NOTE上にアップロードして、クラス全体に共有
③先生主導で答案を添削
→全員の答案の中で先生が良い答案や特徴的な答案をその場で添削。生徒はその様子を見ながらメモを取ったり答案を修正していく
④授業後に全員分の答案を添削して返却
→Classi NOTE上で添削することで、生徒はリアルタイムでの確認が可能。また蓄積されるため生徒の答案の変化が可視化できる
①答案作成は紙で行い、共有する部分をICTで代替
→目的に応じた形で紙とICTを使い分けている
②生徒の答案を通して、添削の観点を刷りこむ
→社会科で大切にしている添削観点を先生側から示すのではなく、生徒の答案を使って良い答案を示す中で添削観点を刷り込んでいく
▲生徒が写真に撮った答案を即時にClassi NOTE上で共有
▲生徒の答案に対して、先生がその場で添削
笹尾先生 :
まず成果として、学校全体で使う形ができてきたことが挙げられます。1年間使ってみて、教員向けの活用に関するアンケートを行った所、ほぼ全員の先生が期限内にアンケートに回答してくれましたし、今後も積極的に活用したいという項目が多数を占めました。1年間で活用が軌道に乗ったと少し安心したところです。
守脇先生 :
ICTツールが普及しても従来のような講義型の授業は無くならないと思っています。教員が教授する時間、生徒自身が考える時間、生徒同士で協働する時間の3つの時間のバランスを考えることが教員の役割になるわけです。
守脇先生 :
ICTツールを活用して、この3つの時間の効果をより向上させていく必要があります。今後は各教科ごとに授業の在り方やICT活用の形を議論していき、学校全体で共通認識を持って指導をしていきたいと考えています。
ICT×紙での授業展開により、生徒の授業参加度が大きく向上
今後に向けて
学校情報
市川中学校・高等学校
(千葉県)
学科 | 普通科 |
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規模 | 中学校:1年342名、2年328人、3年330人 |
進路状況 | 東大13人、京都大3人、国公立大医学部医学科8人合格 |