レポート

高校生鷹援プロジェクト コロナ禍の全国の高校生に向けて、一流のアスリートが贈ったエールとは?

昨年冬、福岡ソフトバンクホークスとClassiが開催した高校生鷹援プロジェクト。本プロジェクト開催のきっかけは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、多くの学校で部活動や学校行事、キャリア講演会などが中止となる中、生徒たちが他者との接点が少なくなったり、将来のキャリアや職業観について考える機会が少なくなったと声が聞こえてきたことでした。そしてまなびをエールするをコンセプトに全国の高校向けにサービスを提供するClassiと、福岡ソフトバンクホークスの全面協力のもと、オンラインで開催したのが本イベントでした。

 

あれから約半年。新型コロナウイルスは沈静化することなく、再びの緊急事態宣言の発出や延長など、思うように学校生活を送れていない生徒や、それを歯がゆく感じている学校関係者・保護者の皆様も多いのではないでしょうか。

 

今回は、改めて本イベントにてさまざまな困難に打ち克ち活躍してきた一流のアスリートから高校生に向けて贈った「この先の人生をより充実させるためのヒントを見つける機会とエール」のエッセンスの一部をご紹介します。全国の生徒・保護者・生徒の皆さんがこれから歩むうえでのエールとなれば幸いです。

 

 

怪我から学んだ大切なもの たくさんの苦悩を乗り越えて夢の実現へ(新垣渚さん)

 

私は高校、大学野球部を経てプロ野球選手になりますが、故障と付き合わなければいけない日々が続きました。そんなキャリアの中で忘れられない人が、ホークスの元エースに斉藤 和巳さんです。非常に厳しい先輩で、本練習は妥協しない。走り込みも妥協しない。ピッチングに関してもアグレッシブで負けず嫌い。「俺の背中を見ろ」というタイプの先輩でした。斉藤 和巳さんは、絶対諦めないんです。この人の前では、いつも私は情けなく感じていました。でも、私はあの人がいなかったら、怪我から復活して1軍のマウンドに上がることはできなかったと思います。感謝の気持ちを、私は一生懸命思い続けると思います。

 

皆さんは、「あの人がいたから」といった影響を受けた存在の方っているでしょうか。勉強もさぼりたい、部活もさぼりたい。でも、友達、ライバルは全然さぼらない。頑張っているからこそ自分が情けなく感じてしまう。そんなことありませんか?好き嫌いじゃなくて、少し離れて考えてみると、この人のおかげだなっていう人、実はたくさん見つかるかもしれません。たくさんの人のことを尊敬できる気持ち、尊敬する人に囲まれているって幸せじゃないですか。

 

今の私の夢はプロ野球コーチになることです。仕事を通じて、成長していく子どもたちから、好奇心を持つことの素晴らしさを教えられました。彼らのために何か手伝いができたなら、どんなに素晴らしいだろうか。そんなふうに感じています。

 

たくさんの人々との出会いが、私をここまで成長させてくれました。今日の皆さんとの出会いもまた、私を成長させてくれる素晴らしいエネルギーになると信じています。いつか皆さんが、ちょっとでもつらいことがあったら、また傷付いたときには、新垣渚があんなことを言っていたなと思い出して、ぜひ元気になってほしいなと思います!

 

 

チーム一筋15年のキャリアから学ぶ「フォア・ザ・チーム」精神(城所 龍磨さん)

 

※城所氏のセッションは、同じくホークスOBの江尻 慎太郎氏のリードのもと、トークセッションとして繰り広げられました。「城所龍磨モチベーショングラフ(本イベントに参加した高校生のみに特別公開)」と題して、15年間の選手生活を含む人生のモチベーションのアップ・ダウンを示したものを元に、その時々にどのようなことを考え、行動してきたのか、実際の高校生からの質問も交えながら、トークに花が咲きました。

 

(城所さん、今、高校生活を送るにあたって、どのような時間の過ごし方をしてほしいと高校生に伝えたいと思いますか?)

私もそうだったのですが、夢を持って、その夢をかなえるために目標を立ててクリアしていくことをおすすめします。漠然と高校生活を過ごさないでほしい。人に与えられた24時間だけが、みんな平等なんです。その時間をどう使うかで未来が変わると思うので、うまい時間の使い方をしてもらいたいですね。

 

人生に無駄なことはない。無駄かどうか考えるのは、別に人生が終わる瞬間に気付けばいいかなって思っています。あとは、変化を恐れないでほしい。固定観念が一番恐ろしくて、自分の中でも固定観念って絶対つくっちゃ駄目だと思っています。自分はこれでいいや、という固定観念にとらわれないでほしい。自分も他人もそうですけど。

 

(夢という夢が見つからない、そういう人はどうすればいいでしょうか。城所さんなりに答えるとしたら、どう思いますか)

正解はないので、自分が好きなことや、好きなことって頑張れるので、そういうことをとにかくトライしていく、その先に見えてくると思います。楽しいからこれを職業にしたいなって思う日が来るかもしれない。私はたまたま、両親が野球が好きで、両親を喜ばせたいという思いで、野球を始めたんです。親のプロ野球選手になってほしいという夢を背負ったというか。それが夢になった。周りの影響だとか環境もあると思うので、視野広く、いろいろな人とコミュニケーションを取ることで、また見つかってくるかもしれません。

 

また、時間の使い方をうまくしていことで、これに時間をたくさん使ってるなって思ったら、それが好きだったりとか、興味があったりとかっていうふうになって、夢につながることもあると思います。

 

 

トップアスリートからトレーナーへ!? 自分にしか真似できないキャリアの築き方(馬原 孝浩さん)

 

私はプロ野球の世界で12年間やってきて、その後、柔道整復師と鍼灸師の国家資格を取得し、現在は野球選手のトレーニングプログラムの構築や体のケアをしています。スポーツトレーナーになったきっかけは、選手生活の大半をけがで苦しんだということがあります。

 

苦しんだこともポジティブにとらえていて、自分が怪我と向き合ってきたことを、選手たちに還元しようとしてます。実際に体を触って、ストレッチもマッサージもやって、選手に私の気持ちも背負ってもらって、グラウンドで思い切り暴れて結果を出してもらっています。トレーナーは大変な職業でもありますが、非常にやりがいのある仕事です。

 

皆さんにお伝えしたいのは、目標や夢は絶対持ったほうがいい。けどそれを土台にしたら駄目で、私は常に周りに対して誠実、素直であれ、と自分に言い聞かせています。自分自身にも誠実で、素直で。それを土台にその上にしっかり目標、目的、そして、夢を持つといいと思います。

 

夢が決まれば、その上に習慣的な目標を上げていくことが重要です。こつこつ自分ができるレベルのものを設定してそれをクリアしていく。自分が興味を持ってること、そして、その先の夢に向かっていくために、まずはしっかりと自分の足元を見つめることが重要です。今、自分がどの位置にいるのか、人と比べたときに何が足りないのか、自分はどういう人間なんだという己を知って、その上で歩み始めていく。そして、小さい目標を少しずつ決めていく。さらに、再分割して、今できることを常日頃意識してやっていく。その根底が大切で、自分自身がどういうふうにあるべきか、どういうふうな性格だからこういうふうになりたいな、だからこういうふうにぶれたら駄目だという指針をしっかり持つことが重要です。

 

しっかりと土台を固めて、根底を何があるのかっていうのを決めて、そして、夢を持って、目標を持って、常に目標、夢を意識する。そのためのノルマを決めて、オン、オフも意識しながら、しっかりやってやって、しっかり遊んでというのをやってみてください。少しずつ日々の積み重ねが返ってくるのが3カ月、6カ月後、それが1年後、絶対形としていい形で表れてくれるはずです。

 

 

数々の栄光を手にしたエース。「積み重ねる」ことの大切さ(攝津 正さん)

 

攝津氏のセッションは、同じホークスOBの江尻 慎太郎氏のリードのもと、トークセッションとして繰り広げられました。

 

(高校生の皆さんに、このコロナ禍の中で、どのように生きていけばいいでしょうか、と聞かれたらどう答えますか?)

まずは、自分のために自分がどうなりたいかっていうことを、思い浮かべてほしい。そうすると、そういうふうになるためには何をしなきゃいけないか、ということが浮かんでくると思うんです。そして、緊張感や責任も生まれてくると思いますね。将来の夢がない人もいると思いますが、絶対こうしたい、どういうふうになりたいっていうのは、多分あると思うんです。そのために何をしなければいけないのか考えて、行動したらいいのかなと思います。

 

私たちの経験からいうと、高校時代って、「大人になったときに一生懸命やります」って思っているんですけど、実はそのときの自分と大人になったときの自分って、突然変異を起こして変わるわけじゃなくて、つながってるんです。だから、もう覚悟してくださいと言いたいです(笑)

 

(この1年間は、全国の高校生によって、おそらく辛い1年だったと思います。ぜひ高校生の皆さんにメッセージをお願いします。)

高校生の皆さんも、修学旅行など学校行事、本来であれば友人との思い出になるはずだったイベントなど、楽しみにしてたことがなくなって、すごく残念だと思います。でも、これだけは伝えたい。それは、何かに向かって自分たちが準備したりとか、練習してきたことっていうのは、紛れもない事実で、それはなくならないものだと思います。だから、そこは自信を持って、欲しいですね。皆さんが一生懸命取り組んだことは、必ず皆さんの血肉になっています。そして、頑張ったということは、どこかにつながると思うんですよね。だから決して無駄ではないと思いますし、自信を持ってこれからも何事にも挑戦してほしいなと思います!

 

 

プロ野球選手からビジネスマンへ。 人生のビジョンとモチベーション(江尻 慎太郎さん)

 

これから社会に出て戦っていくエネルギーとかモチベーションを得るのに、人からいくら評価されたのか。これは関係ありません。私は知ってます。皆さんが部活で疲れて帰ってきて、それでも「宿題やりなさい」って先生や親に言われて、眠い目をこすりながらちょっとだけ頑張ろうっていって机に向かった日のことだとか。誰かに思いが伝わらなくて誤解を生んで、傷ついて、でも勇気を持って謝ったりだとか。今も夢とか目標を具体的に持てていない情けないな、なんて思いながらも、力強く生きてるっていう努力を、知ってます。皆さんは今まで誰にも知られていない、数え切れないほどのたくさんのチャレンジと、たくさんの努力を実はしてきているんです。人には伝わっていないけれども、今までの皆さんの数え切れないほどの頑張りが、必ずこれから自分のエネルギーに変わっていくんだよっていうことを、自分にしっかりと伝えてあげてほしいんです。誰にも知られていないチャレンジに対して、「おまえ、頑張ってるぞ、偉いぞ」ってしっかり褒めてあげてください。

 

南谷真鈴さんという日本の女性登山家・冒険家で七大陸最高峰日本人最年少登頂記録保持者が教えてくれたことがあります。「冒険、登山、チャレンジにおいては、コンパスがとても大切。大冒険、大航海の中ではコンパスで今自分がどこにいるのか。どっちの方向を向いているのか。これを確認しないと、とんでもないゴールに着いてしまう。人生は大航海です。なりたい自分になるというのは、大冒険のようなものです」。

 

加えて、私は大切だと思っていることは「更新」です。毎日、新しい自分になろう。毎日、コンパスを持ってビジョンを確認するなんていうのは、たったの5分でできる、大したことない作業なんです。でも、これによって昨日より今日、今日より明日、ちょっとだけ自分が成長していたら嬉しいなっていうことが確認できます。今日より明日のほうが楽しいほうがいいですよね。それをものすごく強く願って行動しよう。ただ、それだけなんです。ぜひ、更新、そして、日々の自分の成長を実感してみてください。

 

私たちの身の回りにあるもの、これ、全て仕事で作られています。今、皆さんが見ているパソコン、スマートフォン。そして、私が座っている椅子も机も電気も、これ、全部、誰かが誰かを喜ばせるために作ったものです。そうです、仕事って人を喜ばせることなんです。皆さんが社会に出たら、満タンのエネルギーで、たくさんの人たちを思いきり喜ばせてください。それが仕事です。皆さんが周りの人を喜ばせることができたら、周りの人が皆さんに、ありがとうというふうに感謝してくれます。自分の周りがそんな人だらけになったら最高じゃないですか。皆さんがこれから社会に出たら、「よし、全力でたくさんの人を喜ばせよう」って思って生きてほしいと思います。

 

皆さん、ぜひ高い目標を掲げて、障害にぶつかってください。新しい作戦をたくさん発見してください。「自分しか知らないたくさんのチャレンジをしてきてるよ。おまえ、偉いぞ、頑張ってるぞ」って自分のことを褒めてあげてください。そして毎日、ちょっとだけ新しい自分になっていきましょう!

 

 

イベントに参加してくれた高校生の皆さんからの声(イベント後のレポートより)

 

一年前のこの時期にはだれも予想してなかったこの状況に、私自身はもちろん周囲のだれ もが驚いた。私は高校三年生なので高校最後とつく行事はほとんど無くなった。楽しみがほぼなくなり、いいことは何もないように感じられるが、こういう状況になったからこそ体験できたこともある。その代表例が今回のこのイベントだ。「オンライン」これが広まったことにより、プロの選手など今まで遠い存在だった人と身近になり、私にとっては将来の夢へと繋がる大きなイベントになった。今回プロの世界を経験し、トレーナーとして活躍する馬原氏の講演会に参加し講演を聞けたこと、そして、直接質問を通して会話できたことは、今後プロ野球のトレーナーを目指すうえで大きな経験になった。この貴重な経験をできたことに満足するのではなく、いち通過点として今後にどう活かすかが大切だと思う。
(長崎県 高校3年生 ※当時)

 

今、世界中の人々が新型コロナウイルス拡大に悩まされている。この新型コロナウイルスにより、高校生活最初の1ヶ月が休校になってしまった。休校明け、いざ勉強するぞとなると、何も分からず、手も足も出ない状況だった。私は高校の授業に全くついていけなく なったのだ。だが、周りのみんなはスラスラと問題を解いている。勉強に悩んでいた時、母からこんな言葉をかけてもらった。「自分が将来どうなりたいか。これを考えてから、これからの高校生活を楽しんだら?」まさに、攝津正さんがおっしゃった言葉と同じだった。そこから、学校の先生、友達など人を頼りながら頑張った結果、今の私があると思う。ピンチをチャンスに変えるには、決して自力で解決しようとせず、時に周りの助けを借り前向きに考えることが大切だと、この実体験、この講演を聞いてそうだと思った。
(宮崎県 高校2年生より ※当時)

 

 

 

以上