レポート

「探究学習×ICTカンファレンス 2021」 開催レポート

2021年2月20日(土)、関西学院高等部と共催で「探究学習×ICTカンファレンス 2021」をオンラインにて開催しました。

2回目となる今回は、「GIGAスクール時代に考える探究学習の未来」というテーマで実施しました。前回声が多かった「探究学習を進めるうえでの校内の組織体制」「生徒の課題意識の深め方や学びへのつなげ方」など、探究学習を始めるうえで課題に感じるポイントにくわえて、WiFi環境の整備や複数サービスの使い分けなど、GIGAスクール構想で加速したICT環境の考え方や活用ポイントを講演いただきました。

 

当日ご参加いただきました300名近い学校の先生、教育委員会の方々には御礼申し上げます。本レポートでは、特に好評だった関西学院高等部の生徒さんによる講演をメインにイベントの様子をお届けします。

ご講演いただいた学校の先生、テーマは以下のページよりご覧ください。

https://classi.jp/event/closed/post-3009/

 

参加いただいた先生方のお声(一部抜粋)

  • 一番は生徒さんの発表、生の声が聞けたことです。堂々たる姿で発表されていたことが、印象的で発表までに積み上げてきたものの努力が滲み出ていたように感じました。
  • 探究活動はこれからの教育の根幹になると考えております。関西学院高等部の取り組みを学び、本格的な運用の手法等の知見を得られました。
  • 探究活動に対する捉え方が、いい意味で変わった。
  • 探究授業の実践報告を惜しみなく教えていただきありがとうございました。

なお、当日の講演録画や講演資料は、以下のフォームよりご案内しておりますのでぜひご活用ください。

 

先生方に響いた!探究授業を通じて生徒が学んだこと、思ったことの本音

全7セッションのうちの1セッション目に、関西学院高等部 田澤先生と4人の生徒さんに「探究学習の実践を通じた学びに向かう力の育成と学校としてのカリキュラム開発」というテーマで講演いただきました。

 

田澤先生:

「探究活動を進める理由は、“生徒自身が自分の生き方や在り方を考える場をいかに多く作ること”が学校(関西学院高等部)の役割になってくるからと考えています」

 

 

ここから4人の生徒さん(当時2年生)から探究活動、特にグループワークを行ってきた感じたメリット・デメリットを生徒目線で発表いただきました。

 

 

1年前と比較すると、書いている量、学んだことが幅広い

生徒さん:

「学びの記録を振り返ると、1年次は話を聞いて感想を書いて終わりでした。そして評価もよくなかったです。しかし今は、自分の意見を述べるだけでなく、新しいアイディアを生み出すことまでできるようになりました」

 

ご覧の通り、自分の意見やアイディアまで書くようになったことで、必然的に記録する量も増えているのがわかります。

 

 

このような変化は、発表いただいた生徒さんだけでなく、多くの生徒で同じように起こっています。また、この変化は授業内のグループワークのおかげだということでした。これらの変化をもたらしたグループワークについて具体的に感じたことを伝えてくれました。

 

 

生徒が感じるグループワークのメリット

他の生徒と視点や考え方を共有でき、自分の考え方にも変化をもたらす

 

生徒さん:

「最初は先生が何を伝えたいのか正直分かりませんでしたが、それでも、授業は毎回グループワーク形式で行われました。その中で、他の人の意見を聞き、色々な視点や考え方があることに気づくことができ、話し合うことで自分の意見も徐々に伝えられるようになりました。そして、自分にしか思いつかないようなアイディアも考えられるまでになりました」

 

なにかを生み出す際、個人のやる気や知識はもちろん必要ですが、今より良いものにブラッシュアップするために、各自の意見を見つめ直すことも大切です。実現性があるか、本当に必要とされるか、オリジナリティがあるか、すでに似たようなアイディアが世の中にある際に自分たちのアイディアがなぜ必要かなどをグループで議論を重ね、企画をよりシャープにすることにつながりました。

 

グループのメンバーで分担することでプロジェクトが大きく・広くなる

生徒さん:

「一人で大きなプロジェクトを動かすのは難しいですが、複数人で取り組むことで作り出せる内容や規模を大きく、深くすることができるのは、分担することで生まれるメリットです」

 

 

 

 

生徒が感じるグループワークのデメリット

メンバーごとの作業量に差がでる。一方で、良くも悪くも評価はグループ全体となる

 

分担するメリットを感じる一方でデメリットも見えてきました。

 

生徒さん:

「フィリピンの方に、地球温暖化対策に関する企画をプレゼンする貴重な機会がありました。プレゼンまで時間がなかったので、チーム内で資料作成を分担しましたが、出来上がったプレゼンはページごとにクオリティやまとめ方がバラバラでした。最終的に、代表として私がまとめましたが、一人でまとめることに多少不満もありました。同時に、一人で作成した方が早いのではないか、自分がいいと思えるものが作れるのではないかと思いました」

 

分担と一言で言っても、分担する量を平等にすることは難しいと感じたとのこと。

 

生徒さん:

「そういうものだと割り切って、資料作成が得意な人がどんどん進めてしまうと慣れない人は置いていかれてしまい、何をすればいいかわからなくなってしまいます。また、いつもやってくれるからやらない方がいいかなと消極的になってしまう場合もあります」

 

また、代表者が作成するとその人の負担は大きくなりますが、評価はグループ全体に対して行われます。

 

生徒さん:

「全員が同じ準備をして獲得した評価ではないので不平等だと思う人もいますし、あまり作業をせずに評価を得られてラッキーと感じる人もいるでしょう」

 

一人ひとりに点数がつく考査とは異なり、グループワークは連帯責任になります。満足いくものにするために一人で負担を負うか、納得しないものになってもグループ内で効率的に分担するか、バランスの取り方に苦心したとのことでした。

 

 

 

 

同級生同士でアドバイスすることの抵抗感

プレゼン資料の作り方、伝え方もそれぞれ違います。

 

生徒さん:

「パワーポイントに書かれた資料をそのまま読み上げる人、要点をまとめて話し方を工夫する人など、作り方も違います。後者の方が私はいいと思いましたが、同級生同士でアドバイスをするのは言いにくく、不完全燃焼で終わってしまいました。部活とはまた違う、仲間とのつながりの難しさを感じました」

 

 

探究学習を進める先生方へ生徒からのお願い

探究学習は、他の教科と比べて、課題も大変で多い分、先生方が考えていらっしゃる以上の学びがあります。最後に、生徒さんから探究学習を自校で進める先生方へお願いがありました。

 

「課題の時期をいい感じに調整してほしい」

学期末テストとかぶると負担が大きくなってしまう。テストの点数が下がることもあるので、テスト前に時間がかかる課題は避けてほしい

 

「生徒に積極的に関わってほしい」

探究学習は生徒も初めてで不安なため、見守るだけでなくどんどん突っ込んでもらえると嬉しい

 

 

 

 

これらの経験が、答えのない問いへの学びの基礎となる

その他にも、学外の生徒と学校を超えた学びを行なった経験や、国を超えた学びの経験、ICTがあるからこそこれらの活動ができることを誇りに思っているといったことを紹介してくれました。グループワークを通して、生徒さんは協調しながら、自らの意見を伝えてチームでプロジェクトを進めることを学びました。会社でのプロジェクトワークと非常に近いメリット・デメリットを感じていますし、生徒さんが「社会に出ても必ず役に立つと思っている」と締めくくっていた通り、この経験が「答えのない問いへの学び」の基礎となるでしょう。

 

講演の様子は以下の動画でご覧いただけます(録画 約40分)。

 

 

今回は、関西学院高等部の講演以外にも、筑波大学附属坂戸高等学校、福井県立藤島高等学校、長崎南山中学校・高等学校の先生方による探究学習への取り組みについてご発表をいただいております。当日の講演録画や講演資料は、以下のフォームよりご案内しておりますのでぜひご活用ください。

 

 

以上